『日陰の女(上下)』(平岩弓枝/文藝春秋/文春文庫)
優秀な医師ではあっても、高原信子は、花柳界育ちの私生児、そのうえ妻ある男の愛人でもあった。岡崎良太と添い遂げたいとは全身で思いながら心のどこかであきらめていた。日蔭に生まれ、日蔭に育った女は幸せを期待するのにもどこか臆病であった。そして結局は母と同じ運命を巡るのだろうか……女の悲しい愛を描く長篇。
政治家の父を持ちながらも、置屋のおかみの母を持つ高原信子。家事も何もできない母に反発し、手に職を持つ医師になった。が、しかし自分も妻を持つ男の愛人になっていたのだった。そして新しく赴任した病院で出会った岡崎良太。お互いに惹かれあいながらも、第一印象が悪く、親しく離れなかった。しかし、お互いに惹かれていく。そんな中、岡崎の前に現れたのが同僚の親友医師の妹、照奈が岡崎に想いを寄せる。照奈は看護婦になるために岡崎の家に居候することになった。が、最初素直だった照奈が、岡崎を手に入れるため、信子と岡崎の間を邪魔するようになる。そして照奈が首から胸にかけて火傷したことで、岡崎は照奈と結婚することになった。しかし、それも全て照奈の思うがままだった。しかし嘘をついて手に入れた地位は幸せではなかった。
失意の信子はニューヨークで医師として働く。そして照奈は従兄弟と浮気し、妊娠してしまう。浮気相手と岡崎が同じ血液型だと知り、安心した照奈。しかし岡崎は信子と添い遂げられなくなってしまう事実に絶望し、無医村へ志願して行った。そしてその山形の山の中で、岡崎は遭難し、死んでしまった。死んだ後に生まれた照奈の子供は、浮気相手の子供だった。岡崎の血液型を照奈に伝えた母は、岡崎の兄の血液型と勘違いして照奈に教えてしまったのだった。照奈は兄と共に故郷の沖縄に帰り、信子はまたニューヨークへ戻った。誰も幸せになれない話でした。
岡崎を手に入れようとする照奈の行動がむかついた。周りが邪魔ばかりしているのも気分が悪かった。誰も幸せになれなかった。恋愛小説なのに、主人公の死で話が終わるって……。やっぱりハッピーエンドの話がいいな。


